グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム  > 検査について  > 一滴からわかること

検査について

一滴からわかること

検査に関するお話をご紹介します。


10.腎臓の糸玉フィルター

血液中の老廃物や塩分を濾過する働きをするのが、腎臓にある糸球体です。糸球体は毛細血管が毛糸玉のように丸まったもので、左右の腎臓に各100万個ほどあります。血液が糸球体に入ると濾過されて、その後必要な成分だけが再吸収され、不要な成分を尿として排出します。腎臓の機能が悪くなると、必要な濾過が出来ず血液内に溜まってしまいます。重症化してくると合併症が現れたり、透析が必要になることもあります。
この糸球体で濾過できる量を調べるのが「eGFR(推定糸球体濾過量)」です。これは血液検査で測定されるクレアチニンの値に年齢や性別を加味して算出され、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)の指標となります。健康な腎臓は1分間に90ml以上の血液を濾過していますが(eGFR正常値≧90)、この値が低いほど腎臓の機能が低下していることになります。
健診の項目にもeGFRが入っていることが多くなりつつあります。重症化を遅らせるには早期発見が重要です。eGFRの値が低くなっている方(eGFR<60)は早めに受診しましょう。

9. 心臓のあし!?

心電図を測定していると、受診者の皆様から「心電図の結果に〝あし″がどうとかって書いてあったんですけど」と聞かれることがあります。〝あし″とは"脚"のことで"きゃく"と読みます。心臓には2つの脚、右脚(うきゃく)と左脚(さきゃく)があります。
 心臓は筋肉がポンプのように収縮することによって、血液を体の隅々まで送っています。心臓のポンプを動かすために心臓自身が電気的信号を作り出す発電所の役割をしているところがあり、そこから心臓全体に刺激を伝えていきます。脚というのはこの刺激を伝えていく一部分のことで、心臓の右側に伝えるのが右脚、左側に伝えるのが左脚です。

心電図の結果に書かれている「右脚ブロック」「左脚ブロック」というのは、この右脚や左脚を刺激が通る時の流れが悪くなっている事を示します。右脚ブロックは基礎疾患のない方にも起こることが多く、ほとんどの場合治療を必要としません。ただし、意識を失ったことがある方やご家族に突然死の方がいる場合は別の疾患がある場合があるので専門医に相談しましょう。左脚ブロックは右脚ブロックより基礎疾患のある場合が多いとされています。基礎疾患があるか専門医に相談しましょう。

8. 血液で聞く心臓の声・・・BNP

① 心不全て何?

心臓の壁は筋肉の層で覆われ、この筋肉がポンプのように収縮することによって、血液を体の隅々まで送っています。末梢の血管まで送られた血液は、全身の臓器などの器官や細胞に酸素や栄養を届けます。慢性心不全は、このポンプ機能が低下して、体が必要とする量の血液を送り出すことができず、日常生活に障害を来たした状態を言います。

② 心不全の検査には何があるの?

心不全のマーカーとして、BNP(脳性ナトリウム利尿ぺプチド)があります。主として心臓から分泌されるホルモンで、日本循環器学会の「慢性心不全治療ガイドライン」にも記載され、臨床の現場で広く用いられている検査方法です。血管拡張作用・利尿作用を持つほか、血圧の調整にも重要な役割を果たしています。心筋梗塞などの心筋の血流障害や、心不全など心筋が障害されるとBNPの分泌量は増加しますので、値が高いほど心臓に負荷がかかっていることになります。

③ どこで検査できるの?

健診や人間ドックでの心臓の検査として、心電図がありますが、BNPを合わせて検査することで、より心臓の状態がわかります。三越健診センターではオプションとして、健診時の採血に1本追加するだけでBNPを測定することができます。

症状がない限り、心臓の事を普段意識することはないかもしれませんが、私達の心臓は人生の最後の瞬間まで休みなく一生懸命働き続けています。健診を機に心臓の声に耳を傾けてみませんか。

7. 元気の源…甲状腺ホルモン

甲状腺は、のどの部分にある「蝶が羽根を広げた」ような型をした臓器で、気管を前から取り囲むように存在します。甲状腺ホルモンを分泌し、そのホルモンは全身の代謝に深く関与しています。正常では、外から触れることはできません。甲状腺ホルモンには、血中で蛋白と結合しているT3・T4と、蛋白と結合していない遊離型のFT3・FT4があり、通常、ホルモン活性の高い遊離型のFT3・FT4を測定します。

【甲状腺の超音波画像】

【甲状腺の位置】

甲状腺ホルモンの分泌量は、脳の視床下部からの指示を受け、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌することにより調節され、また脳下垂体へフィードバックされています。
この甲状腺ホルモンの分泌調整がうまく働くなった状態に「甲状腺機能亢進症」と「甲状腺機能低下症」があります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰になっている状態で、代謝が活発になります。
生体のエネルギーが無駄に使われ、多くの栄養素はその供給が需要に追い付かない状態になるため、過食に関わらず痩せてしまうことがあります。また、過食に加えて腸の蠕動が亢進するため便通の回数が多く下痢をしやすくなることもあります。その他に多汗、頻脈、月経異常といった症状がでることもあります。甲状腺機能亢進症の代表的な疾患にバセドウ病があります。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが少なくなっている状態で、代謝が低下します。
寒がりになる、肌が乾燥する、だるい、などの症状がでることがあります。
甲状腺機能低下症の代表的な疾患に橋本病があります。その多くは慢性甲状腺炎によるものです。

三越健診センターのオプションには、「サイログロブリン/TSH/FT4」という項目があり、甲状腺ホルモン(FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定し、機能亢進(主としてバセドウ病)や機能低下(主として橋本病)などを調べることができます。

6. 血管が見える?…眼底写真

眼底写真は、眼球内面の後方の写真を特殊なカメラで撮影します。眼底は体の中で唯一、直接血管の状態を観察することができます。

この眼底写真からは、高血圧や動脈硬化、糖尿病などによる血管病変や、緑内障などの眼科的な病変、黄斑変性症などの加齢変化を観察することができます。

5. 動脈硬化は炎症!?…高感度CRP

CRP(C-反応性蛋白)は、「発熱」「火傷」などといった、体に炎症反応が起こると高くなります。高感度CRPはその感度を、約500倍~1000倍高くして測定するものです。
では、なぜ高い感度のCRPを測定する必要があるのでしょう?
それには「動脈硬化」を考えてみる必要があります。

動脈硬化が進むと、動脈の血管壁に形成されたプラーク(コレステロールの沈着した粥腫)が盛り上がって血管の中を狭くしたり、破れて完全に閉塞してしまうことがあります。血管の中が狭くなったり閉塞すると、その先の血流が不足したり、途絶したりします。また、プラークが破れて出血し、そこで出来た血栓が剥がれて、末梢の血管を塞いでしまう事もあります。こうしたことで起こる血管の閉塞が狭心症、心筋梗塞、脳梗塞です。

動脈の血管壁に形成されたプラーク(コレステロールの沈着した粥腫)が盛り上がって血管の中を狭くします。

プラークが破れることで、完全に閉塞してしまうことがあります。
プラークが破れて出血し、そこで出来た血栓が剥がれて、末梢の血管を塞いでしまう事もあります。
動脈硬化は、血管壁に「コレステロールが沈着する」だけでなく、「動脈硬化病巣の炎症」も伴うと考えられています。血管壁にコレステロールが沈着することに加えて炎症が起こると、炎症に関連した細胞から「サイトカイン」というタンパクが出てきて、コレステロールの周りを覆っている皮膜を溶かし、血管が破れたり、出血をしたり、血栓を作ったりします。しかし、無自覚の動脈硬化性変化は、通常のCRPでは測定できないほど微量な炎症性変化と言えます。そこで、非常に感度の高いCRP(高感度CRP)検査で測定することにより、炎症の程度を把握し、動脈硬化の予防や治療に役立てられると考えられています。

また、炎症によって高くなった血中のCRPは、悪玉と言われるLDLと結合して、動脈壁に沈着し、さらに動脈硬化を悪化させるという悪循環が起こります。
さらに脂肪組織の中には、炎症を促進する物質が含まれているため、脂肪組織の増加した状態である肥満は、炎症を増強させることにもなります。

近年、糖尿病の発症においても高感度CRPの有用性が取り上げられています。
三越健診センター臨床検査部における「高感度CRP」についての論文
日本人間ドック学会誌
2002年 vol.17 No.2 P.77-80 「健診における高感度CRP測定の有用性(2)経年変化について」
2003年 vol.18 No.2 P.12-14 「健診における高感度CRP測定の有用性(3)冠疾患との発症との関係で」
2005年 vol.20 No.1 P.53-55 「メタボリックシンドロームと高感度CRP」
2007年 vol.22 No.3 P.31-35 「高値の高感度C-反応性タンパクとインスリン抵抗性との関係」

高感度CRPは1999年にアメリカで心筋梗塞発症の予知マーカーとして認証されました。
三越健診センターでは、いち早く2000年より健診項目に取り入れ、生活習慣病における動脈硬化の危険因子の1つとして判定をおこなっています。

4. コレステロールの国際的認証

コレステロールの測定はアメリカCDC(疾病管理センター)の国際基準の認定を受けて、国際的にも信頼性の高い検査を実施しています。

アメリカCDC認証

3. 中性脂肪は目に見える

血清とは、血液の中で赤血球や白血球、血小板を除いた液体部分のことです。この液体を使って検査をします。

左:【正常血清】
透明な淡黄色です。

右:【乳び血清】
白っぽくみえる成分のほとんどが中性脂肪です。


中性脂肪は食後高くなり、5時間後くらいにピークになります。食事の影響をなくすためには、8時間以上の絶食が必要です。しかし、空腹時にもかかわらず中性脂肪が高い人の中には、左の写真のように血清が白く濁って見える人がいます。つまり、この白く濁った血清が長時間体の中を廻っていることになります。

2. 栄養失調の赤血球…鉄欠乏性貧血

貧血と呼ばれるものは数多くありますが、最も多く見られるのが「鉄欠乏性貧血」です。
血液の中には赤血球と呼ばれるものがあり、この中にはたくさんのヘモグロビンが入っています。このヘモグロビンには、体の隅々まで酸素を運搬するといった大事な働きがあります。そして、ヘモグロビンが作られる上で大切な材料となるのが「鉄」です。鉄欠乏性貧血は、この鉄が不足しヘモグロビンが作れないために起こる貧血です。
鉄が不足する理由には、主に
  1. 鉄の吸収障害(偏食などによる)
  2. 鉄需要の増大(妊婦や成長期などの)
  3. 鉄の喪失(月経や消化管出血、外傷などによる出血)
があります。

【正常な赤血球】
正常な赤血球は、真ん中が凹んだ円盤状になっています。この形をとることで細い血管もスムーズに通ることができ、体の隅々まで行き渡る事ができます。
また、表面積が増えることにより、より多くの酸素を運ぶことができます。この赤血球の中にヘモグロビンが入っています。

【鉄欠乏性貧血の赤血球】
材料となる鉄が不足していることにより、ヘモグロビンの産生が充分でなく、容積が小さくなります。そのため中央が薄くなって見えます。このような赤血球は酸素を運ぶことが十分にできません。

1. 脳も勘違い…レプチンとリバウンド

レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、満腹中枢を刺激し、食欲を抑えます。また、エネルギーの消費を促します。そのため、食事を取りすぎるとその分レプチンを多く出すようになります。過食が続き、体脂肪が増えると、それに比例して血液中のレプチンの濃度も増加します。レプチンはエネルギーの消費を促す働きも持っていますが、過食によりレプチンが血液中に多い状態に脳が慣れてしまうと、エネルギーに変えようとする力が弱くなって(効かなくなって)しまいます。これを「レプチン抵抗性」と言います。つまり脂肪を溜め込みやすい体になってしまうのです。
また、急激なダイエットにより食事量が減ると、それまでと比べてレプチンの分泌量が減り、満腹感を得づらくなります。我慢するのが辛くなり、ついつい食べ過ぎてしまうことに…。
これがリバウンドの原因の一つになってしまうのです。